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1. はじめに

岡は温暖な気候と豊かな自然環境に恵まれた地域であり、多くの人々が快適な住環境を求めて住んでいます。一方で、夏は暑くて湿気が多く、冬は日本海側からの風が強く、寒く感じやすい地域です。年間の日射量は多い地域なので、太陽光発電システムなど自然エネルギーの活用に恵まれています。近年、エネルギー効率が高く、環境に優しいパッシブハウスが注目を集めています。この記事では、福岡でパッシブハウスを建てるためのポイントやメリット、具体的な設計の考慮点について解説します。

1.1パッシブハウスとは

パッシブハウスは、ドイツで1990年代に開発された住宅基準で、超高断熱と高気密性を特徴とします。壁、床、屋根に高性能な断熱材を使用し、窓も三重ガラスや高断熱サッシを採用します。これにより、外部環境の影響を最小限に抑え、年間を通じて快適な室内温度を維持します。加えて、熱交換換気システムにより、室内の空気を新鮮に保ちながらも、熱エネルギーを効率的に回収します。この結果、冷暖房エネルギーの消費を大幅に削減し、光熱費を抑えます。日本の気候にも適応した設計が進められており、結露防止やカビの発生を防ぐ計算も行われます。これにより、健康的な住環境を提供しつつ、長期的な経済性も実現します。パッシブハウスは、環境に優しい持続可能な住まいを目指す人々にとって理想的な選択肢です。住宅の工法や断熱材の指定もなく、ライフスタイルを限定するものでもありません。環境にやさしい基準を設けてあるので、いかにして基準を下回るかを追求します。

パッシブハウスは低燃費
パッシブハウスは低燃費

2. 福岡の気候とパッシブハウス

2.1 気候特性

福岡の気候は温暖で湿度が高い特徴があります。夏は高温多湿で、冬は比較的温暖ですが時折寒波が訪れます。積雪は年に数日程度です。日射は多め。

これらの気候条件を考慮した設計が重要です。

2.2 パッシブハウスの適応

福岡の気候に適応したパッシブハウスの設計には、以下の要素が重要です。

  • 断熱性能の向上:夏の熱を遮断し、冬の寒さを緩和するために、高性能な断熱材を使用します。パッシブハウスでは、ヒートブリッジと言う弱点にあたる部分を明確にし、その対策が非常に重要になってきます。例えば、冬場に防寒着を着ている人が手や首に何も着てないと寒く感じます。家全体の熱の伝わる部分を徹底的に少なくしていく必要があるのです。

 

  • 換気システム:2003年以降、全ての新築には換気システムの設置が義務ですが、質は大きく異なります。福岡の高湿度に対応するために、湿度調整機能を備えた熱交換換気システムが効果的です。ここでもパッシブハウスでは、機器の交換効率を重視し、ドイツパッシブハウス研究所の厳しい認定基準に合格された物を使用しないと大きく減点されてしまいます。多くの換気システムメーカーでは効率を重視しますが、風量測定をすると、カタログ性能値で実際と異なることが多くあります。ここは一般のお客様が知る機会はかなり少ないはずです。福岡の高温多湿地域でこのような不具合が想定されると、風量不足による室内空気の汚染や結露の助長などに繋がります。

 

  • 日射遮蔽:夏の日射を防ぐための庇やブラインドの設置が必要です。日射を遮るということは、冬には日差しが入らないことになりますので、夏冬両輪で検討が必要です。福岡では日射が多いため、南向きに長い庇を設置する家は多いですが、パッシブハウスの計算上、夏の冷房需要は下げますが、冬の日射取得が少ないために、暖房需要が上がってしまいます。これでは、パッシブハウスの基準である、冬の暖房需要15kwh/㎡・a上回る可能性があり、設計段階で申請すら不可になってしまいます。

 

  • 日射取得:冬の日射はタダで手に入る自然の暖房エネルギーです。福岡の家では、夏対策で庇が長く設置してあり、冬の日差しが入らない場合が多くあります。設計段階での窓の位置、日射の計算を正しく行うことが大切です。更に、窓の日射取得率も重要なので、同じ窓の大きさでも設計の違いでエネルギー需要が変わることになるのです。

3. パッシブハウスの設計基準

断熱規格ピラミッド
断熱規格ピラミッド

3.1 高断熱

福岡の気候は東北地方に比べれば温暖ですが、より良い省エネルギーと暮らしの快適さに対応するため、高性能な断熱材を使用して建物全体を覆います。これにより、室内の温度を一定に保ち、エネルギー消費を抑えることができます。断熱材は建物の外部に影響する部分全てに影響します。たとえ断熱材の性能が良くても、前述したようにヒートブリッジがあると、せっかく高いお金を出して高断熱を目指したにもかかわらず、効果が出なくなります。

3.2 高気密

気密性とは、家の隙間の事。隙間を無くすことにもパッシブハウスでは厳しい基準があります。

気密性の数値であるC値を元に、家の漏気回数を0.6回以内にする基準です。この数値を知るためには、実際に気密測定と言う工程を入れて、建築途中と

完成時に3回ずつ、計12回、加圧と減圧と言う2種類の方法で測定しなければなりません。パッシブハウスが求める基準では、C値0.2以下を当たり前に

測定結果として出せる施工レベルでないと厳しいです。本当の気密性は、エネルギーの効率を高め、快適な室内環境を維持します。

3.3 熱交換換気システム

ゼンダー熱交換型換気
日本で初めて、ゼンダー熱交換型換気を設置

福岡の湿度管理に対応するため、熱交換換気システムを導入します。このシステムは、外気を取り入れる際に室内の温度と湿度を調整しながら換気を行うため、エネルギーの無駄を防ぎます。一方で、夏の夜間や中間季節では、換気をすることによって湿度が多くなり、かえってエネルギー需要が増えてしまう状態にも懸念すべきです。当社が提案しているゼンダー熱交換型換気は、上記の条件で湿度を感知し、自動的に室内の空気循環のみを行うバイパス機能を搭載しています。ゼンダー熱交換型換気システムは、日本で初めて馬渡ホームが設置しました。高温多湿な福岡の気候に対応した換気になります。

ゼンダー社ロゴ
ゼンダー社ロゴ

3.4 高性能な窓

窓はエネルギー効率に大きな影響を与えるため、高性能な窓を使用します。一般的にトリプルガラスやLow-Eコーティングを施した窓が主流になりつつありますが、国産窓メーカーでは、世界基準に達する性能の窓を扱っている国産会社は非常に少ないです。一方で、ある国産メーカーはその事実を踏まえて海外のガラスメーカーと提携して性能の高い窓を開発する動きも出てきています。パッシブハウスレベルでは、ドイツパッシブハウス研究所に登録された窓でなければ、大きく減点。認定されることが目的なのではなく、窓の性能をしっかりと計算するとメーカーが打ち出している性能にはなりません。  冬の暖房エネルギーを節約し、夏の冷房エネルギーを削減する重要な部位の一つなので特に注意しておく必要があります。

3.5 日射遮蔽・取得

福岡の夏の強い日射に対応するため、庇やブラインド、植樹などを活用して日射を適切にコントロール。言葉では簡単ですが、土地の方角や周辺建物や障害物の影響を受けます。具体的にこの項目へのアプローチは、周辺建物環境の測量が必須です。夏の日差しは昇降式の遮蔽が有利で、落葉樹を使う手段もあります。

冬は建物の陰になるなどの場合は暖房の需要が高まるので、窓の大きさや位置が同じなら、日射取得率の高い窓を採用すると暖房需要を抑えることになります。パッシブハウスで窓の認定を行うのは、窓一つ一つの部位にある性能を解析し、適切に性能を評価するためです。つまり、どんなに日射取得と遮蔽に優れていても、熱が逃げるようでは片手落ちの性能になってしまいます。

 

4. 福岡でのパッシブハウスの魅力

4.1 経済的メリット

パッシブハウスは、徹底した建築物理計算と施工上の厳しい管理のおかげで、住む人のエネルギー消費量が少ないため、光熱費を大幅に削減できます。福岡は寒暖差はあるものの、寒冷地に比べてパッシブハウスレベルに達しやすい地域です。温暖だからそこまでの性能は必要ないではなく、有利な気候を活かせば、容易に効率的な住宅を実現可能になります。福岡は世界的に見てもパッシブハウスがお得に建てやすい地域です。

4.2 環境への配慮

パッシブハウスは、エネルギー消費量が少なく、CO2排出量も大幅に削減できます。これにより、福岡の美しい自然環境を守ることができます。持続可能な社会の実現のためにも、企業も個人も環境への貢献度は今後益々重要視されるでしょう。建築においては、作る責任・使う責任・捨てる責任が大きく、簡単に取り替えが聞かない建物は次世代に引き継げることが最も価値のある事だと当社は考えています。

4.3 健康的な住環境

高気密・高断熱構造と熱交換換気システムにより、常に新鮮な空気が供給され、カビやダニの発生を防ぐ。これにより、住む人々の健康が守られます。一般的な高気密高断熱では、その根拠に乏しく、エビデンスもないのが現状です。家を検討される方は特に、住宅そのものの性能を知ることで比較検討すべきだとアドバイスさせていただきます。

4.4 家の長寿命化

パッシブハウスは高品質な素材と施工技術によって建設されるため、非常に耐久性が高い。長寿命の住宅は、メンテナンスコストを抑えることができ、長期的な資産価値も維持されやすいです。更に、温熱環境の影響もほとんど受けないため、建物のダメージも少ないことが特に大きな利点。次の世代に負の遺産を残さないことにもなり、豊かさに繋がります。

5. 福岡でパッシブハウスを建てる際の注意点

5.1 地域の建築規制

北側斜線制限
北側斜線制限

福岡市内の土地は50坪に達しない場所も多く、建物の斜線規制や周辺建物との距離が近い傾向にあります。都市部の傾向に当てはまるので、日射取得と遮蔽に周辺建物が影響するのです。パッシブハウスを建てる際には、これらの規制を確認し、適切な設計と施工を行うことが重要です。

5.2 地元の気候条件

福岡の気候に適応するため、地域の気候条件に合った設計を行うことが必要です。特に、湿度管理や日射遮蔽の対策をしっかりと行います。パッシブハウスの冷暖房の消費電力基準は、冬よりも夏の方が緩い基準です。対策として、まずは冬の日射取得と断熱性を意識しながら、夏の日射遮蔽を考慮。さらに、換気システムの機種によっても除湿不可が貢献してくれる場合がありますので、設計段階ではパッシブハウス認証された換気システムを複数検討します。

5.3 専門家の選定

パッシブハウスの設計と施工には専門的な知識と技術が必要です。馬渡ホームは、約28年前から高気密高断熱住宅に取り組み、住宅の性能向上への段階的なアプローチを進めてきました。現在では、パッシブハウス申請予定物件が佐賀県武雄市にて完成しており、実績とノウハウを持っています。

6. まとめ

まとめ
まとめ

パッシブハウスは日本が目指すべき未来の住宅です。未来はこうなるから考えたとき、今この時に実現する方法を常に意識しています。福岡でパッシブハウスを建てることは、エネルギー効率の向上、環境への配慮、快適な住環境の実現に繋がるでしょう。地域の気候条件に適応した設計を行うことで、長期的なメリットを享受することができます。パッシブハウスの導入を検討する際には、自分たちのライフスタイルや地域の気候条件に合った設計を選ぶことが重要です。福岡の美しい自然環境を守りながら、快適で持続可能な住まいを実現するために、パッシブハウスは最適な選択肢となるでしょう。